01労働トラブルでお困りの方へ
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①「コロナで経営が大変なので退職してくれ」と言われたら?
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ⅰ)退職勧奨は断ることができます
自主的な退職を求めることを「退職勧奨」といいます。いくらコロナで会社の経営が悪化していたとしても、あくまで自主的な退職の勧めですので、断ることができます。労働者が断った後にも執拗に退職勧奨を続けることは違法となります(下関商業高校事件・最高裁昭和55年7月10日判決・労判345号20頁など)。
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ⅱ)記録をしましょう
退職勧奨がされた場合、できる限り録音やメモなどで記録をしておきましょう。退職勧奨はほとんどが密室での会話ですので、後で言った・言わないの争いになります。
録音は身を守るためですので、相手の同意を得ない秘密の録音でも証拠として使うことができます。
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ⅲ)強く迫られ退職届を出してしまったらすぐ相談を
不本意ながら退職届を出してしまったとしても、あきらめずにすぐに相談に来てください。例えば、退職届を出した理由が、会社が「退職届を出さなければ懲戒解雇する」と脅してきたような場合には、退職届は無効であると争う余地もあります。
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ⅳ)誓約書などにサインする義務はありません
退職勧奨により、ご自身が退職しても構わないと思う場合でも、注意が必要です。退職の際に、会社が誓約書などの書類にサインすることを求めてくることがあります。サインにより退職金が増加するなどの場合にはメリットがあるかもしれません。しかしそのようなメリットがなければ義務を負担するだけ、あるいは、権利を手放すだけですので、サインはしないようにしましょう。退職するには自作の退職届を提出すれば足り、会社が了承する必要はありません。
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ⅴ)労働組合も重要な選択肢の一つです
コロナで経営が悪化したとして退職勧奨が始まった場合、労働者一人の問題ということは少なく、同じ悩みを抱える職場の同僚も大勢いるのではないでしょうか。
このような場合、労働者が協力し合う労働組合が力を発揮します。
労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」をいいます(労働組合法2条)。
労働組合は、団体交渉権(憲法28条)を有しており、会社は、原則として交渉を拒否することはできません。さらに、会社は労働組合に対して、資料を開示するなどして誠実に交渉をする義務を負っています。労働組合は、弁護士よりも強力な交渉権限を有しているのです。
職場の仲間と労働組合を結成し、または個人で加入できる労働組合(ユニオン)に加入して、会社と団体交渉を行い、会社に対して財務諸表等を開示させて、本当に退職しなければならないほど経営が悪化しているのかなどを検討し、会社と協議していくことも有力な手段です。
一人でも入れる労働組合としては、地域や産業ごとにある様々なユニオンが活発に活動しており、当事務所が力を合わせて事件に取り組むこともあります。
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②「解雇」を通告されたら? (正社員など、契約期間に定めがない場合)
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ⅰ)「退職するように」と言われたら
「退職するように」と言われた場合、それが「退職勧奨」なのか「解雇」なのかを必ず確認してください(退職勧奨については、「①退職勧奨」をご覧ください。)。
労働者が解雇されたものと思って、職場に行かなくなり、後日、労働者があの解雇はおかしいと思って争おうとしたところ、会社が、「解雇はしていない。労働者が自分で辞めた。」と言い出すことがあります。解雇ではなく自分で辞めたと裁判所に判断されてしまうと、退職を争うハードルは高くなってしまいます。
このような事態を避けるためにも、会社を辞めるように言われたら、それは解雇なのかを明らかにするように会社に求めてください。そして、解雇だという場合には、会社に対して、解雇理由を記載した解雇理由証明書を出すように求めましょう。会社は労働者に対して、解雇理由証明書を交付しなければなりません(労働基準法22条)。
もし会社が解雇理由証明書を交付しない場合には、労働基準監督署へ行って会社が解雇理由証明書を交付しない旨を申告し、労働基準監督署を通じて交付させるようにするのも一つの手段です。
もっとも、解雇理由証明書がなければ解雇を争うことができないというわけではないので、解雇だとわかったらすぐに弁護士に相談してください。
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ⅱ)経営上の理由による解雇は裁判所で厳しく判断される
コロナで業績が悪化したことを理由にした解雇など、経営上の理由による解雇を整理解雇といいます。整理解雇は、労働者に責任がないにもかかわらず行われる解雇ですので、裁判所は、能力不足などを理由とする解雇よりも厳しく有効性を判断しています。
具体的には、裁判所は、①人員削減の必要性があるか、②解雇を回避するための努力を会社が尽くしているか、③解雇の対象者を選ぶ基準が合理的で、その基準も公正に運用しているか、④解雇対象者や労働組合などに①~③などについての説明や協議を行ったかという4つの観点(いわゆる整理解雇の4要件)から整理解雇の有効性を判断し、これら4つのうち1つでも欠けると整理解雇は解雇権の濫用として無効になります(労働契約法16条)。
タクシー会社が雇用調整助成金を申請せずに行ったコロナを理由とした解雇について、解雇回避努力を尽くしていないなどとして裁判所で無効と判断される例も出てきています(仙台地方裁判所令和2年8月21日決定)。
コロナ禍だからといってどんな解雇でも許されるというわけではありません。当事務所でもコロナ禍での業績不振を口実とした不当解雇を仮処分や訴訟で争っています。
※カーニバル・ジャパン整理解雇事件の例
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1077764087.html -
ⅲ)労働組合での取り組み
整理解雇が行われようとする場合、労働者一人の問題ということは少なく、同じ悩みを抱える職場の同僚も大勢いるのではないでしょうか。
このような場合に労働者が協力し合う労働組合が力を発揮します。労働組合については、「①退職勧奨 ⅴ労働組合での取り組み」をご覧ください。
労働組合から会社へ団体交渉を申し入れて、会社に対して財務諸表を開示させて、本当に退職しなければならないほど経営が悪化しているのかなどを検討し、解雇の撤回を求めて協議していくことも有力な手段です。
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③「雇止め」と通告されたら?(契約社員など、契約期間に定めがある場合)
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ⅰ)「雇止め」が許されない場合
「雇止め」とは、会社が、有期労働契約の更新を拒否することであり、契約期間の途中で行う「解雇」とは異なります。
もっとも、有期契約であっても、何年も契約更新されてきた方や、更新されるだろうという期待を持っていた方については、正社員に対する解雇と同様に、③について整理解雇の4要件を満たさなければ会社による一方的な雇止めは認められません(労働契約法19条)。
コロナの影響で経営が悪化したことを理由とした雇止めが何でも許されるというわけではありません(②ⅱをご覧ください。)。
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ⅱ)労働組合での取り組み
経営上の理由で雇止めが行われようとする場合、労働者一人の問題ということは少なく、同じ悩みを抱える職場の同僚も大勢いるのではないでしょうか。
このような場合に労働者が協力し合う労働組合が力を発揮します。労働組合については、「①退職勧奨 ⅴ労働組合での取り組み」をご覧ください。
労働組合から会社へ団体交渉を申し入れて、会社に対して会社の財務諸表を開示させて、本当に退職しなければならないほど経営が悪化しているのかなどを検討し、会社と雇止めについて協議していくことも有力な手段です。
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④ 休業補償が支払われない?
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ⅰ)賃金・休業手当
感染拡大を理由として会社の判断で休業した場合、基本的には、労働者が勤務可能であるにもかかわらず会社が休ませているため、会社は、労働者に対して、100%の賃金を支払わなければなりません(民法536条2項)。少なくとも、特別な事情がない限り、60%以上の休業手当(労基法26条)の支払いが必要です。
勤務シフトが減らされた場合も、勤務シフトの日数が労働条件通知書や労働契約書で定められている場合や、勤務実績などからシフト日数について事業主との間で合意があったといえる場合には同様に賃金を請求することができると考えられます。
会社から休業手当が支払われない場合には、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を申請することができます。オンライン申請と郵送による申請があります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.htmlこの給付金は、日額1万1000円を上限に、休業となった日の賃金の8割を、事業主ではなく国が直接給付するものです(つまり事業主が支払うものではありません。)。
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<正社員・固定勤務の方だけではありません>
休業により給料が減った人が対象ですから、正社員や固定勤務の人に限らず、シフトの勤務日数の減少や時短勤務の場合にも給付を受けられることがあります。こちらの厚労省のページをご参照ください↓
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000811764.pdf※書き方について
シフト勤務の方の場合、所定労働日数をどう書くか悩まれるかもしれませんが、休業開始前3か月の平均就労日数で書けばよいでしょう。また、特に日数が減ったのではなく時短になった方の場合、書き方がよくわからないかもしれません。そんなときは、コールセンター(0120-221-276)に問い合わせてみてください。お近くの法律事務所や労働組合に相談するのもありでしょう。
支給要件確認書には事業主が記入する欄があり、協力が得られないことも考えられます。そういう場合は、「事業主」欄に協力が得られなかった旨を記載して提出すれば、労働局のほうで事業主に確認をしてくれます。
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⑤ コロナウイルスに感染したら
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医療従事者等(患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等)については原則として労災保険給付の対象となり、療養費、休業補償を受けることができます(厚生労働省通達・令2.4.28基補発0428第1号)。
一般の方についても、例えば接客業で感染者と濃厚接触した場合など、業務により新型コロナウイルスに感染したといえる場合には、労災保険給付の対象となります(厚生労働省通達・令2.2.3基補発 0203第1号)。
もっとも、感染経路を特定できない場合も多いと思いますので、労災の申請をしつつ、まずは傷病手当金を申請しましょう(但し、国民健康保険については、傷病手当金は条例等による自治体の任意対応とされています。お住まいの自治体にご確認ください。)
労災保険給付の申請は、通常、使用者に依頼して手続をしてもらうことが多いのですが、中にはやってくれない使用者もいます。そういう場合は、直接近くの労働基準監督署に行けば手続きができます。労災給付にはいろんな種類がありますので、まずは労働基準監督署の窓口に行き、相談をするのがよいでしょう。申請用紙は、以下の厚労省のサイトからもダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/03.html
傷病手当金については、ご自身の加入している健康保険組合の事務局、国民健康保険の方はお住いの自治体の窓口にご相談ください。
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⑥ 生活保護を積極的に利用しましょう
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失業したにもかかわらず雇用保険の受給ができないなど生活に困窮した方は、お近くの自治体に生活保護の申請をしましょう。生活保護はすべての人に保障される憲法25条に基づく権利です。弁護士が生活保護申請の同行支援をすることもできます。詳しくは下記「首都圏生活保護支援法律家ネットワーク」のウェブサイトをご参照ください。
http://seiho-lawyer.net/
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☆ その他、労働トラブルについて詳しくは 労働弁護団の新型コロナウイルス労働問題特設サイト をご参照ください。