家賃を滞納したまま、賃借人が行方不明に…
私はアパートの一室を賃貸しています。賃借人が家賃を6か月分滞納したまま、行方不明になってしまいました。部屋には賃借人の家財道具が残されたままです。部屋を空にして賃貸に出したいのですが、賃借人の家財道具を私が処分してもいいでしょうか。
回答者: 弁護士 本田 伊孝
■ 自力救済の禁止
大変お困りだと察します。ただ、賃借人の承諾なしに室内に立ち入って、中にある家財道具を処分することは、「自力救済の禁止」に反し、許されません。また、刑法の建造物侵入罪、窃盗罪に該当するおそれもあります。
最近、家賃を一回滞納しただけで、勝手に賃借人の家財道具を放り出すという「追い出し屋」が問題になっています。このような貸主側の行為に対して、損害賠償が命じられるケースもあります。
やはり、回り道のように見えても、法的な手続きに則って、明渡を実現する必要があるでしょう。
■ 建物明渡請求訴訟の提起
まず、賃貸借契約を解除する必要があります。通常なら、賃借人に対して「何月何日までに未払賃料を支払え」「何月何日までに支払いがない場合には賃貸借契約を解除する」という内容の書面(催告書兼解除通知書)を出して契約を解除してから、訴訟を提起します。しかし、賃借人が行方不明のため、催告書を送付することができない場合には、訴状に催告と解除する旨の記載をして裁判所に提出します。
その後、「公示送達」という手続きをすると、訴状が賃借人に届いたことになり、判決が言い渡されます。
■ 強制執行の実施
建物明渡を認める勝訴判決を取得するだけでは、部屋を空にすることはできません。
部屋の明渡執行を申し立てる必要があります。同時に動産執行を申し立てることによって、部屋に残された家財道具を競売にかけて処分し、未払賃料の回収に宛てることもできます。
滞納額が膨らむ前に、弁護士に相談することをお勧めします。
(2015年10月記)
「家賃滞納」に関する取扱事件