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相続財産のすべてが兄に? 納得がいきません。

相続財産のすべてが兄に? 納得がいきません。

亡くなった母が、同居している兄に財産全部を相続させる旨の公正証書遺言を残していました。母の財産は自宅(土地建物、2000万円相当)と預貯金1000万円です。私は長女ですが、何ももらえないのでしょうか。相続人は兄と私と妹の3人です。

回答

回答者: 弁護士 中川勝之


■ 遺留分制度
 人は遺言によって相続財産をだれに取得させるか自由に決められます。しかし、相続人に全く相続させないとか、著しく少ししか相続させないという遺言がある場合でも、相続人の生活保障や相続人間の公平の観点から、相続人には相続財産の一定割合を相続する権利が保障されています。この権利を遺留分といいます。
 直系尊属(親や祖父母)のみが相続人である場合は、相続財産の3分の1が遺留分、子や配偶者が相続人である場合は、相続財産の2分の1が遺留分です。兄弟姉妹が相続人である場合には遺留分はありません。各相続人の個別の遺留分は、遺留分に法定相続分を乗じた割合になります。
 そこで、お母様の相続人はお子さん3人なので、法定相続分は3分の1ですから、あなたの遺留分は6分の1(2分の1×3分の1)となります。


■ 遺留分侵害額請求権
 遺言によって遺留分が侵害された相続人は、多くを相続することになった相続人や遺贈を受けた第三者(受遺者)に対して、遺留分相当の金銭の支払いを請求することができます。この権利を遺留分侵害額請求権といいます。
 お母様の遺言で相続人の全部をお兄さんに相続させるとなっていても、あなたはお兄さんに対して、遺留分として相続財産の6分1相当の金銭の支払いを請求することができます。
 遺留分侵害額請求は、「遺留分侵害額請求権を行使する」と記載した内容証明郵便等により、証拠に残るようにしましょう。また、遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する遺言を知った時から1年で時効消滅しますので注意して下さい。
 遺留分侵害額請求をした後の手続としては、まずは当事者間で協議し、それでまとまらない場合は、家庭裁判所での手続等が必要になります。
 実際の解決としては、お兄さんは自宅に住み続けたいのであれば、あなたに対して相続財産の6分の1の500万円を支払って解決することが通常でしょう。

(2018年4月記) (2021年5月民法改正により修正)

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