相続問題 寄与分のポイント
私は母が亡くなるまで同居して生活の面倒をみてきました。この事情は遺産分割で考慮されますか?
回答者: 弁護士 岸朋弘
被相続人の遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分けます。法律が定める各相続人の相続分は、例えば、相続人が被相続人の子3人だけの場合は3分の1ずつとなります。もっとも、被相続人の財産の維持または増加に寄与した相続人は、他の相続人よりも取り分(相続分)が多くなることがあります。これを「寄与分」と言います。
裁判例によると、相続人が被相続人と同居して生活の面倒を見ていたことだけでは寄与分は認められていません。
医療・介護費用や生活費を支出していた場合や要介護認定を受けても介護ヘルパーを頼まずに介護していた場合には、寄与分が認められています。
親の面倒を見るという程度を超える「特別の寄与」といえるかどうか、その寄与行為により被相続人の財産が維持され、または増加したといえるかどうかがポイントになります。
寄与分を認めるかどうかや寄与分の金額は、相続人間で協議し、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所での調停・審判で決定することになります。
寄与分は相続人にのみ認められますが、民法改正により、2019年7月1日以降に亡くなった被相続人の相続については、相続人以外の被相続人の親族(たとえば相続人の配偶者)が無償で被相続人の療養看護や労務の提供を行った場合に、一定の要件を満たせば、寄与度に応じた特別寄与料を相続人に対して請求できることになりました。
(2021年10月記)
「相続問題」「寄与分のポイント」に関する取扱事件
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