岸田政権が昨年末に閣議決定した「安保3文書」は、軍事費を倍増させ、23年度〜27年度にかける防衛費を総額43 兆円とし、敵基地攻撃能力を保有するとしています。これは「専守防衛」原則や憲法を逸脱するもので、私たちの暮らしも心配です。
岸田政権は2027年度までに防衛費を2倍にしてGDP比2%に達するよう定めました。米国が、2020年9月に日本に対し防衛費をGDP比2%以上に増やすよう要請したことに応えたものです。
イラクやアフガニスタンでの先制攻撃に使われたトマホークミサイル(約三億円)等の攻撃的兵器の導入が予定され、日本は隣国に脅威を与える世界第三位の軍事大国になってしまいます。憲法にも「専守防衛」原則にも反する戦後最大の安保政策の大転換は許されません。
世界銀行「世界の軍事費ランキング」各国2020年、購買力平価(単位:100万ドル)
政府は防衛費を5年間で総額43兆円捻出するために、「防衛力強化資金」を創設するなどとしていますが、そこには医療施設や医療労働者の待遇改善のため、またコロナ禍で苦しむ中小企業向け融資のためのお金の流用が含まれます。復興特別所得税の流用も浮上しています。「歳出削減」では社会保障や教育関係費がターゲットになるでしょう。国債発行や増税も検討されています。本来国民の生活のために使われるべき財源が軍備に流用され、増税・国債の乱発がなされれば、私たちの生活は圧迫され、さらなる物価高騰にもつながります。軍備のために生活が犠牲になる。これは「いつか来た道」ではないでしょうか?
※2023年1月23日付東京新聞、2023年2月1日衆議院予算委員会での宮本徹議員質問、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」参照
昨年12月に岸田政権が閣議決定した安保3文書、その最大のポイントは敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つことです。これは、想定する「敵国」が攻撃に「着手」した段階で、日本がその「敵国」を攻撃できるという能力です。敵基地のみならず司令部のある政府も攻撃対象となります。何千kmも飛ぶ長射程ミサイル等の購入が予定されています。
いつどこで攻撃「着手」したのか判断は難しく、国際法違反の「先制攻撃」と変わりません。政府がとってきた「専守防衛」すら投げ捨て、憲法9条をふみにじるものです。集団的自衛権を認めた安保法制のもとで、米国が始める戦争に米国と一体化して日本が戦争することになる極めて危険な内容です。
軍事による抑止力は際限のない軍拡競争を引き起こし、偶発的衝突の可能性が高まり、平和を守るどころか戦争を引き起こす結果になります。憂慮されている「台湾有事」で戦争を避けるには、日本が米中間の緊張緩和に努める外交を行うべきです。中国に対しては「力による現状変更」を批判し国際社会に国際法の順守を求め、米国には、超大国による世界戦争回避を求める平和外交こそが必要です。
マンガ:藤井昌子
防衛費を2倍にするためには、現行の防衛予算よりも年間5兆円を増額することになります。その5兆円を私たちの暮らしのために使うとすれば、各分野において下記のようなことができます。
教育・福祉・医療の充実こそ求められています。
※東京新聞 2022年6月3日より
国家安全保障戦略 (日本にいる人々の生活を保障)
国家防衛戦略 (攻撃したくない国を目指す)
防衛力整備計画 (軍事費削って福祉・教育へ)
中国は、人口は日本の11倍、GDPは約4倍、兵力は約9倍という超大国です。輸出入においても日本の最大の貿易相手国であり、中国本土には世界のどの国よりも多くの日本企業の海外拠点があります。日中友好条約を締結しており、経済的にも文化的にも関係が深い中国との戦争なんてあり得ません。
米国の想定する「台湾有事」に巻き込まれることは避けなければならず、外交による話し合いこそ行うべきです。
そこで、平和のための安全保障政策を考えてみました!