事件紹介
すき家争議が解決
2007年から長きにわたった、すき家争議が、2012年12月21日に、東京地裁での和解成立によって解決しました。
以下に、首都圏青年ユニオンや、弁護団などによる声明を掲示して、紹介とします。
なお、弁護団には、当事務所からは弁護士笹山尚人が参加しました。
すき家争議の全面勝利和解解決についての声明
2012年12月25日
東京公務公共一般労働組合
同青年一般支部(首都圏青年ユニオン)
「すき家事件」弁護団
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2012年12月21日、東京公務公共一般労働組合及び同青年一般支部(首都圏青年ユニオン)(以下、両者をあわせて単に「組合」という。)は、長期にわたってたたかってきた牛丼チェーン「すき家」を経営する株式会社ゼンショーとの間で、東京地裁(民事36部)において和解した。
2007年以来、ゼンショーは、組合が組合員の労働条件をめぐって申し入れていた団体交渉を、長期にわたって拒否してきた。この件については、東京都労働委員会、中央労働委員会が、ゼンショーの団体交渉拒否は不当労働行為であるとして組合との間で団交をするよう命じていた。ゼンショーは、これらの命令を不服として国を提訴していたが、これも東京地裁(民事第19部 判決日2012年2月16日)、東京高裁(民事4部 判決日2012年7月31日)において、ゼンショーが敗訴しており最高裁の判断を待つのみという状況であった。
組合は、ゼンショーの団交拒否によって組合が損害を被ったことを理由に損害賠償請求裁判を東京地裁に起こし、今回の和解はこの裁判上成立したものである。 -
和解内容の主な内容は、次のとおりである。
(1) ゼンショーがこれまで行って来た団交拒否についてゼンショーは、組合に謝罪する。
(2) ゼンショーは今後組合からの団交申し入れに対して誠実にこれに応じる。
(3) ゼンショーは、組合と原告福岡に対して解決金を支払う。
(4) ゼンショーは、原告福岡の昇給に関する面談などにおいて原告福岡を組合員であることを理由とした不利益な取り扱いを行わない。 -
言うまでもなく、ゼンショーは、日本最大の牛丼チェーン「すき家」を経営するなど、日本を代表する外食産業大手企業である。この企業が労働組合との団体交渉を正当な理由もなく拒否してきたことは単なる一企業と一労組との労使関係を超えて、社会的な問題であった。「すき家」で働くアルバイト労働者のような非正規雇用の労働者は、雇用の不安定や低賃金など、弱い立場に置かれている場合が多い。しかし、労働組合に団結し、その活動を通じて労働条件を改善させることができるなら、それが希望となるし、そもそも、法は、そのような状態を正常な労使関係として想定しているのである。ところが、ゼンショーの団交拒否は、このような正常な労使関係の形成を拒絶した。特に、ゼンショーが、「首都圏青年ユニオン」という、いかなる雇用形態でも青年自身が団結して職場の問題の解決にあたるという労働組合との関係形成を拒絶したこと、それによってアルバイト労働者を不遇な状況に据え置こうとしたことは、極めて大きな社会問題であった。
今回の謝罪と今後の正常な労使関係形成を行うことの宣言によって、いかなる企業も労働組合との団体交渉を、正当な理由なく拒否することが許されないことを、労働組合の運動によって示してきたことは大きい。 今回の事案は、すき家でのアルバイト従業員の解雇、賃金未払いや労働条件の切り下げの問題をきっかけにして起こった。彼らが首都圏青年ユニオンに加入して長期にわたる争議をたたかったこと、組合が彼らを支えてたたかい勝利することができたことを誇りに思う。組合は、今後は、ゼンショーで働く労働者の労働条件改善のために、団体交渉を通じて正常な労使関係の中で改善できる道を開いたので、そのための組合活動を引き続き強めていく決意である。
この勝利は、非正規労働者が労働組合に加入して、あきらめずにたたかうことがいかに重要かということを社会に示したものになった。「あきらめない」「泣き寝入りしない」労働者のための労働運動として組合がたたかえたことも誇りである。
ゼンショーの従業員のみならず、どこの企業の従業員でもアルバイトなど非正規労働者の多くは、本来の労働法で規定された地位を守られていることが少なく、多くの非正規労働者は泣き寝入りしてしまっている。しかしながら、今回、すき家のアルバイト・パート労働者が首都圏青年ユニオンに加入して長期にわたっての争議をたたかい勝利したことは、全国のアルバイト・パートなど非正規雇用で働く人々を大きく励ますことになったことを確信する。
組合は、今後も、全国の非正規労働者の労働条件を改善しようとする、あらゆる運動と連帯し、非正規労働者の権利実現、労働条件改善のために全力でたたかうことをここに改めて決意するものである。