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2013年のニュース

事件紹介

笹山尚人弁護士 新たなブラック企業の形を許さない〜カフェ・ベローチェ事件 提訴


2013年7月23日、カフェ・ベローチェ事件を東京地方裁判所に提訴しました。
この事件は、改正労働契約法を逆手に取って同法の趣旨から逸脱し、有期労働者の雇用を奪う企業のやり方、雇い止めの理由の悪質さを問題にする訴訟です。
当事務所での担当弁護士は、笹山尚人です。ご注目ください。
なお事件の概要等は次のとおりです。

1,事件の概要
原告 女性(29歳) カフェ・ベローチェ千葉店勤務。
被告 株式会社シャノアール

原告の請求
(1)原告が被告の従業員としての権利を有することを確認する。
(2) 被告は、原告に対し、未払いの賃金として、毎月、金2万2666円を支払え。
(3) 被告は、原告に対し、違法な雇い止めをした損害賠償として、金200万円を支払え。

2,事実の経過
2003年9月、裁判原告カフェ・ベローチェ千葉店オープニングスタッフとして入店。
2007年3月、就職のため、退店。
2008年7月、再度、カフェ・ベローチェ千葉店に入店。
2012年3月、15回更新上限通達を発表。原告について2013年3月15日をもって雇い止めになる旨を通告。
2012年4月、原告らが労働組合・首都圏青年ユニオンに加入。
2012年5月29日、シャノアール本社にて 団体交渉(第1回)
2012年8月13日、シャノアール本社にて 団体交渉(第2回)
2012年12月4日、シャノアール本社にて 団体交渉(第3回)
2013年1月31日、折衝
2013年6月15日、裁判原告、被告を雇い止め。

3,請求の理由
(1) 地位確認及び賃金請求

  •    契約更新を19回行うことで4年11ヶ月にもわたり、原告は被告のもとで継続的に雇用されてきたこと、退職前にも、契約更新を14回行うことで3年7ヶ月にもわたり継続的に雇用されてきたこと、契約の更新が機械的・形式的に行われてきたこと、被告では期間満了により雇い止めされた者がいないこと、及び前述のとおり原告は正社員とほぼ同じ業務内容であったことなどから、本件雇い止めは、「期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められる。」(労働契約法第19条1号)に該当する。
  •    雇い止めの理由について、被告が主張する本件雇止めの理由は、不明確であり、かつ、変遷しており、年齢差別・蔑視の法的に不合理な理由をも述べている。
    • 2012年3月23日には、「そういう法律ができるみたいです。」と、同年4月8日には、部長が店長に対して、「今回の通達は、法律の改正に伴う対応です。」と述べた。
    • 第1回団体交渉で、被告は、店長よりアルバイトの方が経験豊富になると、店長の統率がとりにくくなること、労働基準監督官から有期雇用契約であれば、契約書上に最大更新期間を設けなさい、それを明示しなさいと指導を受けたこと、大学在籍中の4年間に限って働くのが一般的であることを述べた。
    • 第2回団体交渉では、契約更新の上限が存する契約社員から、アルバイトには更新上限がないのはおかしいと苦情を受けたこと、体力的にハードワークであり長く続けられる業務でないこと、従業員に自分の人生の目標等を再確認してもらう機会になることを理由として述べた。
    • そして、2013年1月31日に行われた折衝においては、定期的に従業員が入れ 替わって若返った方がいい、被告ではこれを「鮮度」と呼んでおり、従業員が入れ替わらないとその店の新鮮度が落ちると考えていることを理由として述べた。
    • 弁護士の回答書の中では何ら本件雇止めの理由について述べていない。
  •     以上により被告による原告に対する雇い止めは違法無効である。したがって、原告は被告の従業員としての地位を有する。
    それに伴う賃金も請求する。

(2) 損害賠償請求
被告が原告を雇い止めし、雇い止め理由を変遷させ、まともな理由を示さないばかりか、労働者の人格を傷つける説明を行った事実、その真の解雇理由は、改正労働契約法の脱法に意図がある事実は、それ自体としても原告の人格権を著しく傷つけた。 その損害賠償として、原告は200万円の賠償を求める。

4,事件の意義
本件は、2つの意味でブラック企業の手法があらわれたものである。これを許さず、労働者の働く権利と尊厳を確保する。

(1) 労働契約法の脱法を許さない
被告企業は、2012年(平成24年)3月23日、突然原告ら有期雇用契約の従業員らに対して2013年(平成25年)3月15日をもって契約更新できなくなる旨通告した。また「有期労働契約3ヶ月、更新上限15回」という制度が導入され、同制度のもとでは被告企業は、被告企業で働くすべての有期雇用契約労働者が最長48ヶ月(4年)到達後には雇い止めが行う方針、とのことである。現に今年の3月にはその雇い止めが行われたものと考えられる。
原告は、所属する当組合と被告企業との団体交渉により本年6月15日までの雇用延長となったが、6月15日に雇い止めされた。
2013年4月より労働契約法が改正され、同18条には「有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換しなければならない」としているが、被告企業ではこの5年目を迎えさせない制度改定を行なっている。「労働契約法の改正は、働く人が安心して働き続けられることができる社会を実現するためのものです」(厚生労働省:労働契約法改正のあらまし)とあるが、被告企業の対応は、同法の趣旨を踏みにじり、法を逆手に取って労働者の雇用を不安定にしようというものである。
こうした企業のやり方を認めていたら、労働契約法改正の意味が無くなる。このような脱法的手法を認めてはならない。
本事件は、同制度の撤回と原告の雇い止めを求める裁判である。

(2) 労働者の尊厳を侮蔑した雇い止めを許さない
もう一つ、本件は、雇い止めの理由がひどすぎる。
理由が説明のたびに変遷するのも問題であるが、「店長がやりにくい」だの「長く働き続けられる仕事ではない」だの、労働者の就労を全くないがしろにした理由もさることながら、労働者は入れ替わって「鮮度」を維持したいに至っては、平等の法理念からして絶対に許されない理由である。
こうした労働者の尊厳を侮蔑する企業のあり方も、一つの「ブラック企業」の姿である。こうした企業のあり方を許してはならない。






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