事件紹介
ニコンの雇止めは違法 東京地裁に提訴
派遣社員から直接雇用に切り替えたにもかかわらず、1度も契約を更新することなく雇止め——正社員と同様の仕事に6年にわたって従事してきた労働者が、ニコン(本社・東京都千代田区)に雇止めとされたのは今年3月末でした。
原告の濱谷和久さんは、ニコンの100%孫会社であるニコンスタッフサービスからニコン相模原製作所に派遣され、3か月間の契約を20回以上、計5年半にわたり繰り返し更新していました。2013年9月、濱谷さんが従事していた半導体部品のレンズの研磨・洗浄作業が派遣法上の「抵触日」(派遣法は、「同一の業務」について法定の派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れてはならないとしています。)を迎えます。そこでニコンは、濱谷さんに直接雇用を申し入れました。時給は派遣時代と同じ。契約期間は半年。契約更新は最大でも5年までと、昨年4月に施行された労働契約法18条もしっかり意識しています(労契法18条は、有期雇用の労働者が5年を超えて働く場合に無期契約への転換権を行使できるとしています。ニコンの不更新条項は、この無期転換権を端から行使させないために予防線を張っているのです。)。
濱谷さんは、首都圏青年ユニオンの組合員として職場復帰を求めましたが、会社は応じませんでした。
派遣から直接雇用へ。有期とはいえより安定した雇用が得られたと喜ぶのが多くの方の通常の感覚ではないでしょうか
ところがニコンは、その期待をあっさりと裏切り、直雇用にした途端一度も更新することなく雇止めにしました。「減産」を理由にしていますが、ニコンは株主に対して、半導体分野は今後市況の回復が見込まれると喧伝しています。なぜ濱谷さんを辞めさせなければならないのか、その理由は全く示されていません。
先の通常国会では、専門26業務を廃止し、「派遣は派遣のままに」使い続けることができる派遣法改悪法案が出されましたが、運動の力もあって廃案となりました。現実には、仮に派遣から直接雇用に切り替わっても、ニコンのように簡単に切り捨てられる事態が生じています。ニコンは、直接雇用で濱谷さんとの契約を繰り返し更新していれば、簡単に切ることはできなかったはずです。本件は、いわば形を変えた「派遣切り」とも言える事案です。
直接雇用の原則を維持し、非正規雇用の使い捨てを許さないためのたたかいに、どうぞご注目下さい。
(当事務所の担当弁護士中川勝之、山添拓)