事件紹介
志村新弁護士が担当したアンシス・ジャパン事件で勝訴判決(3月27日東京地裁)が確定
この事件は、米系IT企業アンシス・ジャパンに2010年10月から2013年2月まで在籍していた女性エンジニアが、同社に対し、在職中の未払残業代351万円余と上司らから受け続けた不当な扱いについての慰謝料の支払を求めて2013年6月に東京地方裁判所に提訴したもの。
被告会社は、提訴直後から和解解決を申し出ましたが、内容を非公開とすることに固執したため決裂すると、掌を返したように原告の主張を徹底的に争い続けました。証拠調べを終えた後の2015年2月、被告会社は再び和解による金銭解決を申し出たものの謝罪要求を拒んだため決裂。すると、被告会社は、未払残業代請求の部分に限って「請求認諾」(被告が原告の請求受入れを表明することで、裁判所作成の調書に記載され原告勝訴の判決が確定した場合と同様の効果を生じる)を即座に行いました。ところが、3月半ば近くになっても「請求認諾」した金額の支払いがないので強制執行もあり得ることを伝えたところ、ようやく未払残業代と遅延損害金として計算した金額を振り込んできました。
政府が今国会に提出している「残業代ゼロ」「定額働かせ放題」法案(労働基準法「改正」案)が通ってしまったら、こうは行かないでしょう。
そして、2015年3月27日、残る請求部分について慰謝料と遅延損害金の支払を命じる原告勝訴判決が言い渡されました。
判決は、原告が在職中に収集して裁判に提出した豊富な証拠資料(メールのやり取り、自身のノートの記載)を信用できないとする被告の主張を退け、元上司の裁判での証言も信用できないと断定して、原告側が裁判で詳細に主張した元上司の不当な対応などの実態と原告が受けてきた精神的苦痛を認めました。そのうえで、被告会社は、原告との間の労働契約上の債務不履行と、原告に対する不法行為を続けた元上司の使用者としての不法行為責任に基づき、原告が被った損害を賠償すべき責任があるとしました。
4月3日、被告会社は判決が支払を命じた慰謝料と遅延損害金を代理人口座に振込んで支払い、その後、判決書交付から14日間の控訴期限が経過して地裁判決が確定しました。
原告の女性は、「在職時から訴え続けた異常な職場環境の実態が、裁判所が判決で明確に認定した事実として公に認められたことで、会社が行ってきた違法行為の一端を明らかにすることができました。皆様にも、会社の不当な扱いに泣き寝入りするか辞めるかだけではなく、裁判所に提訴して最後まで闘ってほしいと願います。」と語っています。