事件紹介
小部正治弁護士、中川勝之弁護士、青龍美和子弁護士が担当する東京都(非常勤賃金改定等)不当労働行為再審査事件で中央労働委員会が命令書を交付しました。以下に当該労働組合及び弁護団の声明を紹介します。
2017年3月13日
東京公務公共一般労働組合・同弁護団
1 中央労働委員会は、本年2月15日付で、中労委平成26年(不再)第31号(初審東京都労委平成23年(不)第108号、平成24年(不)第77号事件)について、再審査申立人である東京公務公共一般労働組合(以下「組合」、再審査被申立人は東京都)の再審査申立てを棄却し、東京都総務局による団交拒否を免罪する命令を発し、本年3月9日、その命令書を交付した(以下「本命令」)。
組合は東京都総務局宛に、専務的非常勤職員、臨時的非常勤職員及び専門的非専務的非常勤職員(いずれも特別職)の賃金改定等の労働条件を議題とする団交を申入れ、同団交への総務局の出席を求めた。しかし、総務局が出席を拒否し、賃金等について決定権限のない産業労働局等に対応させる態度を固持したため、実質的な交渉が実現できず、各非常勤職員は交渉の機会もないまま毎年一方的に賃金が減額される等している。本件は、この不当労働行為に対して是正を求めるものである。
2 本件以前に、組合が東京都に対し、組合の分会である東京都消費生活相談員ユニオンの組合員である消費生活相談員の5年雇止め問題や賃下げ問題について団交を求めたが、東京都が団交自体を拒否し、あるいは不誠実な団交をした事案については、東京都の団交拒否の違法が、都労委、中労委、東京地裁、東京高裁、そして、最高裁において5度断罪され、東京都に対して団交応諾を命ずる都労委命令が確定した。
しかし、東京都総務局は、この最高裁判例が出ても団交に応じようとはしない。東京都総務局は、すでに失効した「覚書」を口実にして「連絡協議会」を開催したと称して団交に出席せず、産業労働局等をして交渉に応じるとさせ、引き続き団交拒否政策を貫徹しようとしている。
3 本命令は、決定権限と交渉権限を分け、各非常勤職員に共通する賃金制度の見直し等の制度的な対応を必要とするものについては、実質的には総務局が知事部局内における意思決定について実質的な権限を有していたとみざるを得ない等としながら、各局が要求に応じられない理由について相応の説明を行ったと強弁した。そして、「全庁的に実施することが前提のものであることから応じられない旨」「任用期間が1年であることから熟練度や経験に応じた加算は考えていない旨」といった各局による「回答の多くは、組合の要求に応じられない理由を述べるにとどまり、譲歩の可能性につき検討する意向を示すものではないため、組合からは不十分な回答と受け止められるおそれ」があるとしながら、そうした回答は非常勤職員に共通する賃金制度の見直しという要求の性格に由来し、「総務局も含め、いずれの局においても同様の対応がなされる可能性が高いものであったといえる」とした。
本命令は、非常勤職員の賃上げという切実な要求について、制度見直しにはどうせ応じないのであるから一般的抽象的な回答を交渉権限が委ねられた各局がすれば良いと言わんが如くの判断であり、合意達成の可能性を模索して誠実に交渉するという団体交渉の意義を全く理解していないものである。
4 東京都は、本件都労委申立て後、2015年度から大半の非常勤職員を一般職化し、当該職員の団交権を剥奪した。また、組合壊滅を狙って、残った特別職の組合委員長を解雇した。この解雇に対しては東京地方裁判所への提訴及び都労委への申立をして争議中である。
また、総務省は一般職化を任用根拠の適正化の名の下に立法的な対応を含めて進めようとしているが、一般職化によって非常勤職員の劣悪な労働条件が改善される見通しは必ずしもない。求められるのは特別職の団交権の剥奪ではなく、団交権をより実効あらしめることである。
我々は、異常な本件反動的命令に対し屈することなく闘いを継続し、東京都に対し、直ちに総務局が組合との団体交渉に誠実に応じることを求めるものである。
以上