事件紹介
日本郵便労契法20条格差是正裁判、東京地裁で勝訴(水口洋介弁護士、平井哲史弁護士)
9月14日、日本郵便労契法20条格差是正裁判で、東京地裁(春名茂裁判長)は、①年末年始手当②住居手当③夏期・冬期休暇④病気休暇を時給制契約社員に保障しない会社の措置は労働契約法20条に違反するものであり、手当不支給について不法行為が成立するとして会社に対し損害賠償を命じました。
以下に組合の声明を紹介します。
日本郵便株式会社・労契法20条格差是正訴訟2017年9月14日判決にあたっての声明
2017年9月14日
郵政産業労働者ユニオン
労契法20条格差是正訴訟原告弁護団
本日、東京地方裁判所民事第19部(春名茂裁判長)は、期間雇用(非正規)社員である原告3名が不合理な労働条件の是正を求めて日本郵便株式会社を提訴した事件につき、正社員との年末年始勤務手当等の労働条件の相違を不合理だとして、原告3名全員の請求を認容し、会社に対して合計金92万6800円の損害賠償を命じた。この判決は、日本の非正規労働者の未来に希望を灯す大きな意義のある画期的な判決となった。
郵政産業労働者ユニオンに所属する原告ら3人の組合員は、2012年8月において正規屈用と非正規雇用の著しい労働条件の格差を解消するために戦後初めて立法された労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)に基づき、2014年5月8日、日本郵便株式会社を被告として有期契約である期間雇用社員と正社員の労働条件格差の是正を求める訴訟を提起した。3年にわたって、郵便外務・内務業務を担当する社員は正社員も期間雇用(非正規)社員も業務の内容と責任の程度は同一であり、職務の内容と配置の変更の範囲もほとんど変わらないにもかかわらず、様々な種類の手当や休暇などの労働条件に大きな格差があるのは到底容認できない不合理なものであると主張し立証を尽くしてきた。これに対し、被告日本郵便は、管理職以上の社員も合わせて正社員全体と比較すれば期間屈用社員の職務の内容も配置の変更の範囲も大きな差異があり、正社員には「長期雇用のインセンティブ」を付与する必要があるので、様々な手当や労働条件に格差があっても許されるとt張していた。
本日の判決は、原告らが格差是正を求めていた労働条件のうち、年末年始勤務手当、住居手当の損害賠償を認め、他に判決の理由の中で夏期・冬期休暇と有給の病気休暇を取得させないことは不合理な労働条件の相違であることを認めた画期的な内容である。
2013年4月に労働契約法20条が施行されてからこれまでいくつかの判決が出されたが、これまでの判決は同条の立法趣旨を正しく解さず不合理な格差について、管理職への登用など将来の人材活用の仕組みの可能性や定年後の賃金減額が社会的に容認されているなどといった誤った根拠に基づき、同条の不合理性について慎重に判断すべきとして、長澤運輸事件、メトロコマース事件、佐賀中央郵便局事件、ヤマト運輸事件などにおいて、労働者側全面敗訴か一部勝訴かの極めて消極的な判断を示してきた。
しかし、本日の東京地裁民事第19部の判決は、これまでの消極的な司法判断の流れを変えて、今後の非正規労働者の労働条件格差を是正していくための扉を開いたといえるものである。日本郵便株式会社は、約20万人の正社員に対してほぼ同数の約19万人の期間雇用社員が働く大企業である。民間の大企業で働く非正規労働者の格差を是正する画期的な判決が出たことは、非正規雇用の増大と格差が広がるわが国の屈用社会に与える影響力が大きいものといえる。
郵政産業労働者ユニオンは正社員だけではなく、原告らのような非正規労働者も積極的に組織化して労働条件の格差是正を被告会社に求めてきた。本日の判決は、正社員の組合員が法廷で証言に立ち、同じ職場で同じ誇りをもって同じ仕事をしているにもかかわらず、大きな労働条件の格差があることはおかしいと証言し、正社員も非正規社員もともに一致団結して闘ってきた労働組合運動の大きな成果である。
原告ら被告会社で働く非正規社員は、「夢と働きがいのある職場にしてほしい」と切実に願っている。被告会社は本日の判決を真摯に受け入れ、非正規社員と正社員との労働条件の格差を是正するために、直ちに労働組合との団体交渉の席に着いて労使交渉を始めることを強く求める。
以上