もう会社を辞めたい
昨年から雑誌編集プロダクションの会社で働いています。仕事は社長の指示で雑誌記事の編集を会社支給のパソコンを使ってやっています。勤務時間は午前10時30分から20時まで、休日は土・日・祝日ですが、社長は会社と私の関係は「業務委託契約」なので、残業代・深夜勤務手当はなく、3月に所得の確定申告が必要だと最初に言われました。ですから私は残業手当等の請求もしていません。今年の3月ころから社員が数人辞めたため急に仕事量が増え、残業等がこの3か月の月平均で80時間を超えました。そのため、この間、私は、動悸・息切れ・頭痛が激しく、先日、ついにダウンして心療内科の先生に「適応障害」と診断されました。もう会社を辞めたいのですが、社長は今辞めたら、それによって生ずる費用は私の責任だから損害賠償請求するというのでなかなか辞められません。
回答者: 弁護士 小林 譲二
■ 業務委託ではなく労働契約
まずあなたと会社の契約関係は業務委託契約でなく労働契約です。業務委託の受託者の仕事は委託者から独立に自らの判断にしたがってできますが、あなたにはそのような自由はありません。社長の指示にしたがって、会社の建物内で、会社の支給したパソコンを使って、勤務時間中に、指示された雑誌編集をし、残業をしているからです。会社は労働法の適用を免れるために業務委託だと主張しているにすぎません。
■ 残業手当・深夜勤務・休日出勤手当の請求ができる
したがってあなたは労働者ですから、会社に対して、1日8時間を超える残業や深夜勤務、さらに日曜日の出勤について割増手当(各25%増、残業時間で深夜勤務の場合には50%増、日曜出勤は35%増、残業が月60時間を超えるときは50%増)を請求できます。会社はこの手当を不払ですから同額の付加金を裁判所に請求することもできます。
■ 即時時解約の申入れができる
この間、あなたには、月平均80時間超える残業等の過重労働の結果、適応障害という「やむを得ない事由」が発生していますから、これを理由として労働契約を直ちに解約することができます(民法628条)。
■ 損害賠償請求と労災申請ができる
最後にあなたの適応障害の発症は会社の業務体制の不備によるものですから、あなたは会社に対して損害賠償請求できます(同条但書)。会社はあなたに対して損害賠償請求はできません。この適応障害は過重労働の結果であり労働災害ですから治療費等について労災申請をすることもできます。
(2020年1月記)
「労働」に関する取扱事件