事件紹介
平井弁護士、青龍弁護士が担当する日本郵便定年後継続雇用拒否事件、東京地裁に続いて東京高裁でも勝訴
<日本郵便が銀座郵便局の集配担当者に対しておこなった定年後の継続雇用拒否について、東京地裁に続いて東京高裁でも勝訴判決を受けました>
弁護士 平井哲史/弁護士 青龍美和子
2013年4月1日から改正高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)が施行され、60歳定年で退職する労働者のうち希望者は全員継続雇用されるようになりましたが、それまでは使用者と過半数の労働者を組織する労働組合とが協定した選定基準により選別することも許されていました。
原告(被控訴人)は、改正高年法が施行される1日前の2013年3月31日に、従前の選定基準を適用して継続雇用を拒否され、これはおかしいとして提訴をしました。
日本郵便における再雇用の基準は、直近2年度分の人事評価を点数化していずれも80点以上であることでしたが、原告は、定年直前の年(2011年)の人事評価が80点未満であったことが理由となって不合格とされました。
しかし、この人事評価がいいかげんであり、裁判ではそこに焦点を当てて、人事評価は裁量権を逸脱または濫用したものであり、無効だから、この人事評価でなく普通の評価がされていれば80点を超えるので再雇用されていたはずであるとして争いました。
一審判決では、いくつもある人事評価項目のうち「営業・業務実績」という1項目をとりあげて、2010年度と2011年度とで業務遂行状況は変わらないのに「○」の評価が「△」になっていることについて、会社側が合理的な主張立証をできていないということで、裁量権の範囲を逸脱するものと判断しました。これにより2011年度の人事評価は80点以上となり、継続雇用の基準を満たすので継続雇用後の地位の確認と賃金の支払いを認める全面勝訴となりました。
控訴審では、会社側は、①原告は勤労意欲が低下していたから業務効率も低下していた、②2010年度の人事評価のほうが間違っていた、③本人が2011年度の人事評価を容認していた(からいいんだ)と主張していましたが、高裁判決はいずれも一蹴し、控訴棄却としました。その後、会社が上告を断念したことによりこの高裁判決は確定しました。
人事評価は、使用者の裁量によるところが大きいのですが、賞与や昇給ひいては退職金にも影響してきますから、恣意的にやられたのでは労働者はたまりません。ですから、使用者には公正に査定をする義務があると言うべきです。今回の事件は、定年後の継続雇用の有無の形でしたが実際に問われたのは使用者の人事評価のあり方です。いくら評価項目と評価基準が定められていても、その運用がいいかげんであれば恣意的におこなわれた人事評価は無効になること、評価はきちんとした根拠をもっておこなわなければならないことを今回の判決は示しています。日本郵便に限らず、使用者による評価が公正・公平になされるようになる一助となることを願ってやみません。なお、原告は、郵政産業労働者ユニオンの組合員であり、みんなを励ましたいと復職に意欲を燃やしています。
以上