事件紹介
日本商業新聞社マタハラ事件、調停成立(今野弁護士、今泉弁護士、長谷川弁護士担当)
2016年11月1日、今野弁護士、今泉弁護士、長谷川弁護士が担当している日本商業新聞社マタハラ事件で、労働審判手続において会社が300万円の解決金を支払う内容の調停が成立しました。
女性記者の石島聡子さんが、育児休業満了時に、終業時間を従前の17時から18時半に延長することに同意を迫られましたが、保育園のお迎えの時間に間に合わないため同意できない旨を伝えると、同意しなければ辞めてもらうしかないとして退職勧奨を受け、約1年半におよぶ自宅待機を強いられた事件です。この自宅待機期間中、会社は給与額の6割弱しか支払わなかったため、賃金差額及び慰謝料等を求め、労働審判を申し立てました。
労働審判委員会(民事第19部・西村康一郎裁判官)は、本件が雇用機会均等法9条3項に違反するいわゆる「マタニティ・ハラスメント」にあたることを認め、賃金及び慰謝料として300万円の解決金を支払う内容で和解する調停が成立しました。
調停成立直後に厚労省記者クラブで記者会見を行いました。石島さんは、「子の誕生を否定されている気がした。親がそれを認めてはいけない、声を上げないといけないという思いでやってきた。」「マタハラで悩んでいる人は、妊娠した自分を責めないで。」などと、時折声を詰まらせながら記者たちに訴えました。
声明を下記に記します。
日本商業新聞マタハラ事件解決にあたっての声明
- 1 本件は、日本商業新聞の女性記者である石島聡子が、2013年10月より1年の育休取得後に復職する際、会社から終業時間を従前の午後5時から午後6時半に延長することについての同意を求められた上、同意できなければ退職することを要求されたというマタニティ・ハラスメント事件である。
石島記者は、保育園のお迎えの関係から、終業時間をせめて午後6時にすることを求めたものの、会社は応じず、復職を拒否した上、自宅待機としてその間の給与を6割しか支給しなかった。自宅待機期間は2014年10月から2016年1月までの1年4カ月にもわたったが、その間新聞通信合同ユニオンや代理人交渉を続けた結果、従前の労働条件での復職が実現した。
しかし、復職はしたものの、石島記者は社長から中小企業退職金共済の掛け金の減額に同意するよう求められたり、一部同僚から無視されたりする職場環境に耐え切れず、2016年8月に退職に至ったものである。 - 2 石島記者は、2016年8月18日、自宅待機期間中の未払い賃金とマタニティ・ハラスメントによる慰謝料を求めて東京地方裁判所に労働審判を申し立てた。
9月30日に開かれた第1回労働審判期日において、労働審判委員会(民事第19部・西村康一郎裁判官)は本件が産休・育休取得を理由とした不利益取扱いにあたることを認めた上で、解決金支払いによる和解を双方に促し、11月1日、会社が解決金300万円を支払う内容での和解が成立した。 - 3 産休・育休取得を契機とした不利益取り扱い、いわゆるマタニティ・ハラスメントは明白な違法行為である(雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10条、平成26年10月23日最高裁判決、厚労省通達平成27年1月23日雇児発0123第1号等参照)。
しかし、そのことが十分に企業経営者や従業員に認識されず、本件のようなマタニティ・ハラスメントが横行しているのが日本の現状である。
私たちは、本件のようなマタニティ・ハラスメントを根絶し、子どもを産み育てながら安心して働き続けることができる社会を作るために引き続き力を合わせていく決意である。
2016年11月1日
日本新聞労働組合連合
新聞通信合同ユニオン
石島聡子
代理人弁護士 今野久子/今泉義竜/長谷川悠美