事件紹介
当事務所の今野久子弁護士、井上幸夫弁護士、水口洋介弁護士、滝沢香弁護士、青龍美和子弁護士、長谷川悠美弁護士が担当する、株式会社メトロコマースに対して正社員との賃金格差の是正を求める裁判で、東京高等裁判所で判決が言い渡されました。
当事務所の今野久子弁護士、井上幸夫弁護士、水口洋介弁護士、滝沢香弁護士、青龍美和子弁護士、長谷川悠美弁護士が担当する、株式会社メトロコマースに対して、
東京メトロ駅構内の売店に勤務する契約社員(有期雇用)販売員が、正社員との賃金格差の是正を求める裁判で、本年2月20日午後3時、東京高等裁判所で判決が言い渡されました。
残業手当の相違のみを不合理と認めた一審判決を変更し、住宅手当、褒賞、残業手当のほか、退職金の一部について契約社員に支給しないことは不合理だとして、損害賠償請求を認めました。
判決を受けての原告・弁護団声明を掲載します。
メトロコマース事件東京高等裁判所判決にあたっての声明
2019年02月20日
1 判決の概要
株式会社メトロコマースの契約社員Bの女性4名が、同社に対して、賃金格差の是正と差額賃金相当額などの支払を求めた損害賠償事件の控訴審(平成29年(ネ)第1842号)において、2019(平成31)年2月20日、東京高等裁判所第17民事部(裁判長川神裕、裁判官岡田幸人、裁判官森剛)は、一審原告(控訴人)ら3名に対して、請求を一部認容する判決を言い渡した。
判決は、労働契約法20条施行後に発生した住宅手当、褒賞、退職金の一部及び弁護士費用の相当額を損害賠償として認めている。一方、原告の1名の請求を全て棄却し、本給、資格手当、賞与については、いずれも棄却している。
さらに、早出残業手当の差額相当額の損害賠償を認容した一審判決の取消を求めた一審被告の控訴については棄却した。
2 判決理由中の判断について
本判決は、一審原告らと比較対象となる無期契約労働者について、全正社員とした一審判決と異なり、原告が主張した販売業務に従事する正社員と判断した。
そのうえで、住宅手当については、「従業員の住宅費を中心とした生活費を補助する趣旨で支給されるもの」であり、「生活費補助の必要性は職務の内容等によって差異が生ずるものではない」等として、契約社員Bに支給しないことを不合理だと判断している。
また、褒賞については、「業務の内容にかかわらず一定期間勤続した従業員に対する褒賞ということになり、その限りでは正社員と契約社員Bとで変わりはない。」として、契約社員Bに支給しないことについて不合理と判断した。
退職金については、「少なくとも長年の勤務に対する功労褒賞の性格を有する部分に係る退職金すら一切支給しないことについては不合理といわざるをえない。」と判断した。しかし、その損害額については、原告らの退職時の月額賃金を基礎に、「正社員と同一の基準に基づいて算定した額の4分の1」としており、極めて低額である。
上記以外の本給、資格手当及び賞与について、不合理と認めなかったことは、極めて不当である。
3 判決の評価
退職金について、一部ではあるが、契約社員Bに支給しないことを不合理だと判断し、損害賠償を認めたことは一歩前進である。
しかしながら、本給及び賞与等の相違を不合理と認めなかったこと、退職金についての認容額が低額であること、1名の原告について請求を棄却したことについては、速やかに上告し、最高裁判所で是正を勝ち取ることに全力を尽くす決意である。
2019(平成31)年2月20日
労働契約法20条メトロコマース事件原告団・弁護団