2015年10月31日、東京法律事務所60周年記念連続セミナー第4回『国と企業の責任を問い続ける~原発・アスベスト~』を、プラザエフにて開催し、100名を超える方々にご参加いただきました。
第1部は、「福島原発事故被害の実態と集団訴訟のいま」として、福島現地で調査・研究を続けている大阪市立大学の除本理史さんから、強制的に避難させられている方々の被害の実態やなぜ被害救済が実現しないのか、国の原発賠償制度の構造にまで迫って解説していただきました。
また、青龍美和子弁護士が集団訴訟の状況や福島県内に住んでいる方々の被害実態について、本田伊孝弁護士が原発労働者の過酷な実態と、彼らを安く使い捨てにする大企業の責任について、それぞれ報告しました。
第2部は、「アスベスト被害の実態と集団訴訟の到達点」として、長谷川悠美弁護士が、建設労働者の作業環境やアスベストによる深刻な健康被害、国やメーカーの責任について報告しました。
原発もアスベストも、国や大企業の無責任な政策により、命と健康を害する重大な問題が発生し、一刻も早い被害者の全面的救済が求められている点で共通しています。それぞれの問題の所在や、国や大企業の責任の具体的な内容は異なりますが、命と健康を犠牲にして、企業の利益追求が優先されたのです。
参加者からは、従来のセミナー以上に詳細な感想が寄せられました。とりわけ、アスベスト被害について、これほど重大な被害が発生していること、わかっていたのにそれを回避する手立てを国や企業がとらなかったことを知らなかった、驚いた、許せない、といった内容が多数寄せられました。
私たち弁護士には、こうした声を受け、国や大企業の責任を追及する仕事が課せられています。身の引き締まる思いをしてセミナーを終えました。
◆第1部「福島原発事故被害の実態と集団訴訟のいま」の報告はいかがでしたか?
- ●今日伺ったように、被害者の方のお話を伺えば伺うほど、個と個のつながり(支援)となるようで難しいと感じていた。けれど声にならない声、伝わらない想いをかかえ、苦しんだままきた今でも忘れないでいるよう伝え、それぞれができることを大きい小さいにかかわらず取り組んでいくことの大切さを再認識しました。
労働の現場にいる方についての実態は伺う機会がなかったので、やはりそうだったか…と。東電はもとより国が責任のがれをすることはどんなことも全てそう。どうすればこの国が変えられるのか大きな課題にもつながることでしたが、全てにおいて無関心の方々に知らせることの大切さをより実感しました。
- ●震災の年、申し訳なく思いながらもしばらくは福島産の野菜、果実は買えなかった。風評被害の苦痛は相当甚大だったと思う。「ふるさと喪失」とは先祖の墓参りができないということで、日本人にとってはかなり心情的に苦痛。きちんと被害に見合う賠償を受けるべき東電が責任逃れする精神が理解できない。きちんと人間らしく誠実に賠償すべき。講演を聞いてそういう思いが強くなった。原発作業者の離職後の生活、健康面にも責任をもつのは当然。福島は好きなところで支援していきたい。
- ●一般の報道やニュースなどでは触れられることの少ない事故の側面がよくわかりました。除本先生のお話では賠償=貨幣換算可能な領域以外の失われた大切なコミュニティ、セーフティネットのようなものもうばってしまった事故の深さがよくわかりました。
青龍先生のお話では生業訴訟の進展がよくわかりました。なかなか、福島地裁には傍聴支援にはいけませんが、東京での支援や意見広告に協力したいと思います。最後の本田先生のお話は胸に突き刺さりました。再稼働の条件に火山、地震は問題にされているが、作業員の労働条件は議論されているか?という問いかけは非常に重要な論点指摘だと思いました。心から原告の方々にエールを送ります。
- ●賠償不均等による被災者間の分断という問題はあまり聞いたことがなく、深刻な問題のひとつであることが認識できてよかった。福島原発事故の問題は被災者、原発労働者、国、企業各々間の問題を含んだ難しい状況があるのだなということが見えてきたように思った。被害者3800名による一律5万円/月の精神的損害賠償の一部請求訴訟という構成にはなるほどと思った。
- ●原発事故一つをとってみても、地域住民、作業員など、さまざまな立場の人々が多くの問題を抱えていることがわかった。これからも訴訟の動向を見つめながら、この問題について、どう行動すべきか自分なりに考えていきたいと思った。
- ●国とメーカーの責任ははっきりさせなければならないと思います。先日原発メーカー訴訟の傍聴に行きましたが、メーカーよりの誠意のない馬鹿にした対応に本当に腹が立ちました。全ての力を結集して頑張っていくことが必要だと思いました。
- ●今回の報告では、「補償・復興」と「責任」のこの2点をクローズアップさせた形となって、非常に興味深かったです。何か災害、公害が起きればできる限り復元して人が生きられるよう補償することが大切です。ですが、その補償が適切に行われているのか、私の目から見ましても東電及び国の態度には疑問抱かざるを得ません。東電や国は今回の原発事故を「公害」と呼んではいません。ですが、明らかに公害であるのです。このように言葉ひとつとってもニュアンスを変えることによって、責任逃れの表れだと思いました。私も福島出身です。福島が喪ったのは可視化、修復できるものだけでなく除本氏も言われましたように、コミュニティであり、景観であり、人としての尊厳でもあるのです。こうしたものを傷つけることも被害であり、そこを考慮することも大事だと考えます。
- ●問題点が良くわかりました。勉強になりました。お友達に伝えます。
- ●分かりやすい報告ありがとうございます。世論を盛り上げたいと思っています。
- ●国の責任が問われていないのはその通りである。数値化できない被害をどのように科学的に示すのか知りたい。
- ●今後の裁判所の心ある判決を願います。
- ●他団体の訴訟の話も聞いているので、やはり問題点は同じと実感しました。
- ●最近は関心の原発再稼働の問題に重点があったが、福島の現状の深刻さを再び認識しました。
- ●原発事故の被害実態を地域レベルの被害、生業別被害、作業員被害など様々な観点から考察することができ非常に勉強になりました。
- ●不安や恐怖という主観的な問題について、間主観的ひいては客観的に被害といえるのだという青龍先生の報告が非常に興味深かったです。
- ●具体的で生々しい報告でした。また責任論について突っ込んだ話があり、本当にそうだと思いました。ありがとうございました。
- ●検察審査会の追及はありますが、東電だけでなく、国の刑事責任を問う必要があります。
- ●問題がいろいろあると思っていたのですが、予想通りの実態が明らかになて課題解決の困難をどう克服するかこれからの提案を宜しくお願いします。
- ●訴訟の困難さ、被害者によりそう弁護活動の大切さなど、考えさせられました。
- ●このような企画運営に取り組んだ皆様に敬意を表しているところです。私自身は〝生業原告〟の一員なので青龍先生の発表に特に感銘を受けた。(内容が具体的で一人ひとりの顔が浮かんだ)。また作業員の死は、爆発前の数年間にも何人かいたのをうやむやにしていた歴史、原発の危険を訴えた人たちは裁判にも負け、浜通りの人たちに笑いものにされたこと。福島に70年生きた者としては知らなかった県民の一人として辛い知識になりました。原発との距離だけでの被害を考えるべきではないこと、全く同感です。弁護士の皆さんに心から敬意を表します。
- ●経過は良くわかるが現在どういう「集団訴訟」が起き、どういう方向に進んでいるのかが…。問題が大きいのでどのようにまとめていくのか?
- ●3人の演者がそれぞれの観点からの報告で非常に密度の高いご講演でした。
- ●非常重い問題であり、大変勉強になりました。そもそも「帰還」が行える状況がどうかについて、科学的ではなく、政治的に決められているのが最大の間違いのような気がします。広島や長崎で放射線の影響を研究していて、既に退官した先生たちの知見を借りることは出来ないでしょうか?(現役は研究費が止められるので…)。
- ●だんだんと情報が少なくなり、注目がなくなりかけている現状であらためて被告の現状がわかりました。
- ●詳しく伺って良かったです。経過を知るにはどうしたら良いのか。貴所のホームページを開いてみます。
◆第2部 「アスベスト被害の実態と集団訴訟の到達点」の報告はいかがでしたか?
- ●「アスベスト」の言葉はよく耳にしていましたが、実際のところで何でどうなるものかについて無知だったので、DVDで建設などの現場をみせてもらい、患者さんのDVDまでみせていただきその実態と被害のひどさについて認識することが出来ました。最後にここでも国の行ったことと国の責任回避かと…今後もひとりでも多くの被害者の方々の救済に尽力いただきたいと強く思いました。今日聞いた私たちには知ったことを知らせることの大切さを実感しました。
- ●被害を受けた生の声を聞けたのは良かった。闘病中の身で講演して下さった宮島さんに感謝いたします。ずっとお元気でいらっしゃいますように。映像を使ってまた解説もつけてくれて内容が理解しやすく、被害の実情もわかりやすかった。石綿肺にかかった方の呼吸の音が耳から離れない。一生懸命働いてガンや重度の呼吸困難になるのはあまりに理不尽。せめてまともな賠償を受けてほしい。
- ●宮島さんのお話について、これまで弁護団、運動との歩みは、原発の訴訟のこれからにも大きな道しるべになると思いました。結審注目しています。皆さんのお体の悪い中での運動に敬意です。
長谷川さんのお話、非常に詳しくアスベストの歴史、運動の歴史がよくわかりました。どうぞ頑張って下さい。
- ●アスベスト被害の実態についてはDVDでリアルに知ることができた。集団訴訟については、地域の判断内容も紹介していただき、どういう点を原告として争っているのかが、大変明快にわかりよかった。「裁判の中だけでは解決できない」というメッセージも強く伝わってきた。
- ●法政大学院でこの問題について論文(「行政の規制権限不行使について」)を書いているので実際どのようなことが起きていたのかを弁護士の方から生の声を聞き、大変ためになりました。
- ●知らなかったので勉強になりました。
- ●人の誇る雄弁(企業、国)より現場で建設に従事してきた元労働者の姿を見ることで、これが現実なのだと思い、胸の詰まる思いになりました。そして、アスベストは過去の問題ではなく、今現在も苦しんでいる人がいるのだと、私をハッと気づかされる思いでした。原発とアスベスト、この二つには非常に共通点があると考えます。まず国家が経済活性の名の下で行われてきました。そして、現場で働いている労働者が被害に遭って、国、企業の「責任」は追求しない態度。企業における社会的責任も原発とアスベストにおいても問うべき問題であるでしょう。映像の最中、粉末が散る画がありましたが、自分の家ももしアスベストが含有していると思うと恐くなりました。
- ●DVDは大変効果的だった。見ているだけで息苦しく、気分が悪くなり、うつむいている人も目立った。これからの解体作業が全部あんな風にきちんと行われるのか心配。
- ●多くの苦しんでいる方々がいます。早く良い判決を出してもらいたいと思います。
- ●私自身終わった問題だと思っていた節がありまして、今日話を聞く機会があって良かった。
- ●アスベスト問題が詳しく理解出来ました。
- ●訴え続けることの必要性と世論の動きが裁判所を動かすというのは安保と通じていると実感しました。
- ●アスベストは終わったと思っていましたが、国と企業の責任追及はこれからと認識しました。
- ●DVDとグラフなどの説明で説得力があった。アスベストで入院中に酸素マスクのコードが抜けて酸素供給が止まり死亡した人の身内から「余計なお世話」と言われたので、遠ざかっていました。しかし、アスベスト問題は今まさに続行しているので機会があれば、企画などに参加したいと思います。
- ●アスベストの被害発生の状況をDVDの映像からわかりやすく学ぶことが出来ました。国際的知見が確立してもなお、アスベストを用いたメーカーの責任が認められていないことには憤りを感じました。
- ●問題の解決はメーカー責任の追及が不可欠だと思いました。
- ●生々しい映像に患者の苦しみがよくわかりました。やはり闘ってこその前進があることもよくわかりました。
- ●アスベストの被害はやっと広く知らせるようになってきました。メディアがもっと頑張ってほしい。
- ●医学界からの解決への提起がほしいと思います。
- ●DVDも併用し、非常にわかりやすかったです。
- ●「一人親方」差別については初めて知ることが出来ました。アスベストというのはナノ素材として見ると天然で極めて特徴的な構造(針状)を持つため、特別な機能を持つのだと思いますが、今後、人工のナノ素材が出てきた時に「第二のアスベスト」にならないのかチェックの体制が必要なのではないかと心配になります。
- ●アスベスト問題の情況が詳しくわかりました。
- ●解らないことや、知らないことが多くある中で、わかったことがあり、大変良かったと思います。ありがとうございました。
- ●親戚に被害者がおります。今日教えていただいた状況を知らせます。
- ●6月の総行動にほとんど毎回参加しているのですが、今回ほどアスベスト公害のひどさを感じとれたのは初めてです。大学の授業でもあのDVDを見せたいなあと思いました。ありがとうございます。
- ●驚きました。メーカーはひどい。政治が悪すぎます。