取扱事件 | 東京法律事務所

労働事件

労働審判

労働審判

I. 労働審判とは

1. 労働審判とは、どのような制度か

労働審判とは、労使紛争について、裁判官と労使の専門委員で構成される労働審判委員会が、事件の審理を行った後に、調停(当事者双方の合意に基づく紛争解決)を試み、調停が成立しない場合には、「労働審判」(通常訴訟における判決に相当するもの)を出す裁判制度です。

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2. 労働審判の特徴

(1) 迅速な紛争解決
労働審判制の最大の特徴は、労使紛争を短期間に解決することです。このため、労働審判の期日は、原則として3回以内と決められています。必ず3回の期日を開かなければならないわけではなく、第1回期日で解決に至ることも少なくありません。統計では、労働審判の75%は、申立をした日から3か月以内で終結しています。
通常訴訟(本訴)の場合、一審段階で、審理に1年程度を要するのが通常です。これに比べると、労働審判は、格段に早いということが言えます。
(2) 労働審判員の関与
裁判官(労働審判官)と労使の専門委員(労働審判員)の3名で構成される労働審判委員会が審理することも、労働審判制の大きな特徴です。労働審判員は、労働団体(連合、全労連などの労働組合)、使用者団体(日本経団連)からの推薦を受けて任命されていますが、労働審判員が関与することで、労働現場の実情に沿った適正な解決が図られることが期待できます。
なお、労働審判員は、中立公平な立場で、審理に関与することになっています。
(3) 大半の事件が調停で解決
統計によれば、労働審判事件の7割が、調停によって解決されています。調停とは、当事者双方の合意に基づく紛争解決(話し合いによる解決)ですが、合意に至らない場合には、通常訴訟の判決に相当する「労働審判」が出されます。
労働審判に不服がある当事者は、異議申立をすることができ、異議申立がされた場合、事件は通常訴訟(本訴)に移行します。しかし、通常訴訟になった場合には、解決に至るまで相当の時間を要します。また、通常訴訟で争っても、労働審判と同様の結論になることが予測されること等から、労働審判段階で紛争を解決しようとして、調停成立率が高くなっていると考えられています。

3. どのようなケースが労働審判の対象になるか

(1) 個々の労働者と事業主(使用者)間の紛争が対象
労働審判は、個別的労使紛争の解決を目的とする制度ですので、個々の労働者と事業主(使用者)間の紛争であれば、あらゆることが対象となります。具体的には、解雇、内定取消、有期雇用の雇い止め、退職強要、賃金・残業代・退職金の未払い、労働条件(賃金)の切り下げ、配転・出向等の人事異動、パワハラ・セクハラ等があります。
その一方、労働組合を一方当事者とする集団的労使紛争を労働審判で解決することはできません。
(2) 上司を相手方とする申立はできない
労働審判は、あくまでも労働者と「事業主」(使用者)との紛争を解決する制度ですので、パワハラやセクハラの事案で、パワハラ等を行った上司等を相手方として申立をすることはできません。パワハラ等で申立をするときは、使用者責任(民法715条)や就業環境整備義務違反等を理由に、使用者に対して申立をすることになります。
パワハラ等を行った上司等が在職している場合には、当人が労働審判の期日に出席することが多いでしょう(また、上司等を利害関係人として、労働審判手続に参加させるよう上申することも考えられます)。上司等が労働審判の期日に出頭した場合には、上司等との関係も調停によって解決することが可能です。
(3) 事実関係が余りに複雑な事案は向かない
後述のとおり、労働審判では、調停が成立するか、労働審判が言い渡されて、手続が終了するのが原則です。しかし、事実関係が複雑すぎて、3回以内の期日では到底審理ができないようなケースでは、労働審判手続そのものを打ち切ることがあります(労働審判法24条に規定されていることから、「24条終了」などと呼ばれています)。24条終了がされた場合、事件は、通常訴訟に移行することになります。
従って、事実関係が余りに複雑であったり、医学的な論争が必要となる案件(過労死事案など)では、労働審判で行くのか、最初から通常訴訟を提起するのかについて、慎重に検討する必要があります。

II. 事件類型ごとの各論(代表的な紛争例)

1. 解雇事件

(1) 解雇の有効性判断
解雇事件の大半は、解雇が解雇権濫用(労働契約法16条)に該当するか否かをめぐって争われます。解雇権濫用法理とは、解雇に「客観的合理性」と「社会的相当性」が認められない場合、解雇を無効とするものです。その判断は、社会通念(=一般的な常識)に沿って行われます。
案件によっては、明らかに無効と考えられる解雇がある一方、解雇が有効であるか否かが微妙であるものも少なくありません。
(2) 解雇事件の解決方法
解雇が無効と判断された場合の解決方法には、職場復帰と金銭解決の2つがあります。職場復帰は、解雇を撤回させて職場に戻るものです(解雇されてから職場に戻るまでの賃金の支払いを受けるのが通常です)。一方、金銭解決は、職場に戻る権利を放棄し、退職金規程で定められた退職金のほかに、一定のまとまった金銭(解決金)の支払いを受けるものです。
  1. ア) 復職を求めるケース
    使用者の側は、一旦解雇した労働者を再度、職場に戻すことには強い抵抗を示すのが通常です。従って、労働審判での調停で、使用者が復職を認めることは、余り期待できません。調停が不成立となった場合、労働審判委員会が解雇無効の心証を抱いていれば、解雇無効を前提とした地位確認の審判が出されますが、これに対して使用者は異議の申立をするのが通常です。この場合、事件は通常訴訟に移行することになりますので、金銭解決を視野に入れず、復職を求める場合には、労働審判ではなく、最初から通常訴訟を提起した方がよいかも知れません。
  2. イ) 金銭解決を視野に入れるケース
    労働組合が解雇紛争を支援してくれるようなケース以外では、職場復帰しても、その後に嫌がらせを受ける懸念があるため、労働者の側で、職場復帰ではなく、解決金の支払いを受けて紛争を解決すること(=金銭解決)を求めることが少なくありません。このようなケースでは、早期に紛争解決を図れる労働審判が適していると言えます。使用者が金銭の支払いを渋るケースもありますが、多くの案件では、労働審判委員会による説得を使用者が受け入れて、解決に至っています。金銭解決する場合の解決金の水準を決める要因としては、以下のようなものが考えられます。
    1. ①解雇の有効、無効の判断

      審理の結果、労働審判委員会が解雇無効の心証を形成した場合には、解決金の額はそれなりに高くなります。一方、解雇有効の心証が形成された場合には、少額の解決金しか得られないのが通常です(解雇が有効な場合、労働者は使用者に対して、何の請求権も有さないことになりますので、このようにならざるを得ません)。
      また、案件によっては、解雇の有効・無効の判断が微妙なものもあります。このようなケースでは、解雇無効の心証が形成された場合に比べると、解決金は低くなるのが一般的です。

    2. ②勤続年数

      勤続年数が長い場合、労働者は高齢化していることが少なくなく、再就職に困難を伴うのが一般的です。このことから、勤続年数が相当長期に渡る場合には、解決金の額は高くなる傾向にあると言えるでしょう(但し、年齢が高くても、勤続が短い場合には、このような考慮はされないのが一般的です)。

    3. ③使用者側の支払い能力

      中小企業の場合、時として、解決金を支払うだけの資力(経済的な余力)がない場合もあります。このような場合には、解決金の額が低くなったり、分割払いとなることもあります。

    以上が、解決金を決める要因の代表的なものですが、具体的な金額についての統一的な基準はなく、事案ごとに異なります。解雇無効であることが明らかであり、使用者の資力がある場合には、月例給の1年程度が目安となるといったところでしょう(もちろん、事案によって、それよりも高くなることもあれば、低くなることもあります)。

2. 残業代請求

(1) 残業代請求に必要となる証拠資料
残業代請求に際しては、残業をしたことを明らかにする証拠が必要となります。その最も有力な手段は、タイムカードのコピーです。また、会社に提出している業務日報や、給与明細(残業時間が記載されている場合)、会社のパソコンでの電子メール(送受信時刻が分かるもの)のコピーなども証拠となります。労働者本人が作成したメモは、客観性に劣ることは否めませんが、上述した客観性のある証拠が少しでもあり、その証拠と本人が作成したメモの記載内容が合致していれば、メモの信用力は高まります。
このような証拠が全くない場合、残業代を請求することは困難ですが、職場において、恒常的かつ一律に時間外労働が行われているような場合(例えば、就業規則所定の始業時刻が午前8時30分とされているにも拘わらず、毎日、午前8時から朝礼が行われているような場合)には、労働者本人の供述に基づき、残業代が認められることがあります。
(2) 管理監督者の抗弁について
いわゆる「管理職」にある(あった)労働者が残業代請求をすると、使用者側は、「就業規則(賃金規程)では、管理職には残業代は支払われないことになっているから、残業代を支払う必要がない」と主張してくるのが通常です。しかし、労働基準法は、「1週40時間、1日8時間」を超えて労働させた場合には、必ず残業代を支払わなければならないと定めています。そして、この定めは、当事者の合意によって排除することは出来ません(これを強行法規と言います)。
従って、会社の職制上「管理職」とされているだけの理由で、残業代が請求できなくなるわけではありません。法律上、残業代を支払わないでよいのは、労基法41条が定める「管理監督者」に該当する場合だけです。この「管理監督者」に該当するには、①経営者と一体的立場にあるほどの権限を有すること、②出退勤の自由度があること、③その地位に相応しい処遇を受けていること(相応に高額の賃金が支払われていること)が必要であるとされており、多くの企業が定義する「管理職」に比べると、相当に狭い概念です(イメージ的に言えば、「課長」レベルの労働者が「管理監督者」に該当することは、まずないと言ってよいでしょう)。このため、「管理監督者」に該当すると判断されるケースは、極めて少ないのが現状です。
(3) 労働審判の活用
残業代請求も、紛争が早期に解決できる点で、労働審判に適していると言えます(労働審判では、調停による解決が目指されますが、労働者側が一定の譲歩をしてもよいと考えている場合には、調停成立の可能性が高まります)。
但し、労働審判の場合でも、残業をしたことは労働者が証明しなければなりませんので、上述した証拠資料に基づき、原則として1日ごとの残業実績を明らかにする必要があります。もっとも、給与明細に、月の総労働時間が記載されているような場合には、1日ごとの労働時間が証明できずとも、請求することは可能です。
(4) 付加金請求について
なお、労働基準法は、「1週40時間、1日8時間」を超えて労働させた場合に、残業代の支払いを義務づけるとともに、それが裁判に持ち込まれた時には、裁判所は、未払い残業代と同額の「付加金」の支払いを命じることができると定めています。例えば、未払い残業代が100万円あった場合に、この100万円の他に、さらに100万円(合計200万円)の支払いを命じることができるわけです。この付加金は、使用者に重い負担を課すことで残業代の不払いを抑制しようとするものですが、案件によっては、使用者が残業代を支払わなかったのにはやむを得ない事情があったとして付加金の支払いを命じなかったり、部分的に命じる(例えば100万円の残業代に対して70万円の支払いを命じる)こともあります。
この付加金を労働審判で命じることは出来ないというのが現在の実務運用です(但し、除斥(時効)との関係で、労働審判の申立時点で、申立をしておくことが必要となる場合があります)。

3. 労働条件の不利益変更(給与の引き下げ等)

(1) 労働条件の不利益変更のパターン
労働条件の不利益変更(給与の引き下げ)のやり方としては、①労働者の同意を得る、②就業規則を変更する、③労働協約を変更するというパターンが考えられます(ただし、労働組合がない職場では、そもそも問題となることはありません)。中には、④これらの手続を一切踏むことなく、一方的に不利益変更が行われることもあります。
(2) 個別同意による不利益変更と労働審判
前述の④のケースは、明らかに無効ですので、労働審判によっても容易に解決ができます。
また、①のケースの場合、労働者の同意が無効と判断されることがあります。すなわち、賃金切り下げに関しての同意は、「労働者の自由な意思に基づくものであると認められる合理的な理由が客観的に存在する」ことが必要だと考えられています。例えば、使用者から「経営状況が悪い(勤務成績が悪い)ので、来月から給与を20%引き下げる。受け入れてもらえない場合には、解雇することになる」などと言われ、やむなく、「分かりました」などと答えた場合、「分かりました」という同意の意思表示は、「労働者の自由な意思に基づくもの」とは言い難いので、給与減額の同意が無効とされることになります。
従って、労働者の同意が自由な意思に基づくものとは言い難いことが立証できるケースでは、労働審判によって、引き下げられた給与相当額を取り戻せる可能性があります。
(3) 就業規則の不利益変更の場合
一方、就業規則や賃金規程を変更して、給与額を引き下げる場合には、その引き下げが有効であるかどうかは、①労働者の受ける不利益の程度(減額の幅)、②給与を減額しなければならない使用者側の必要性を基本とし、その他の要素(労働組合との交渉の状況等)を加味したうえで、給与減額の有効性が判断されます(労働契約法10条)。
給与減額の必要性の有無の判断に際しては、経営分析なども必要になり、それについての論争をしなければならないこともあります。このようなケースでは、3回の期日しか開かれない労働審判で解決するには困難が伴います。また、就業規則は全ての労働者に共通して適用されますので、就業規則の不利益変更のケースで、使用者が一部の労働者との間で調停を成立させることは、通常期待できません。従って、就業規則の不利益変更のケースは、労働審判には馴染まないとも考えられます。

4. パワハラ、セクハラ

(1) 労働審判の対象となるか
パワハラもセクハラも労働審判の審理対象となりますが、パワハラやセクハラを行った上司等を相手方として申立をすることはできず、申立は、あくまで使用者(会社)に対して行うことになります。
(2) パワハラ、セクハラの事実の立証
パワハラやセクハラがあったことは、労働者が証明しなければなりません。パワハラやセクハラは、言葉によるものが少なくありません。また、セクハラについては、当事者しかいない場所(「密室」)で行われることが少なくありません。このようなケースでは、3回の期日しか開かれない労働審判では、パワハラやセクハラの事実を十分に明らかにできない可能性があります。
その一方、パワハラ、セクハラについて録音やメールなどの証拠があったり、第三者の証言が得られる場合には、労働審判での解決も十分に可能と思われます。また、使用者がパワハラやセクハラの事実があったこと自体を認めつつ、損害賠償額を争っているようなケースは、労働審判での解決に馴染みます。
なお、労働審判手続は、非公開ですので、セクハラの案件で、被害労働者がセクハラがあったこと自体を知られたくない場合には、労働審判を活用することにはメリットがあります。

III. 相談から解決までの手続の流れ

1. 弁護士との相談と方針の決定

(1) 事件を解決するには、まずは、弁護士にご相談いただくことになります。その際、証拠となり得るものをご持参いただくことが必要ですが、ご自身で選別せず、証拠となりそうなものは全てご持参いただくことが大切です。

(2) ご相談の場で、事件解決の見通しを判断し、どのような手段を用いるかを決めます。どのような手段を用いるかは、ご本人の要求(例えば、解雇事案で復職を目指すのか、金銭解決を目指すのか)との兼ね合いによって決めることになります。
なお、労働審判は、弁護士をつけなくても申立が可能ですが、多くても3回の期日しか開かれないため、審理の効率性が求められます。このため、手続や法律に習熟した弁護士に事件を委任するのが無難でしょう。

2. 事前準備

(1) 申立書の作成、提出
ご相談の結果、労働審判の申立をすることになった場合には、申立書を作成することになります。申立書は、相談者の方からの聞き取りに基づき、弁護士が作成します。
通常訴訟の場合、訴状、答弁書、準備書面で「主張→反論→再反論→再々反論」といった論争をするのが通常です。しかし、3回の期日しか行われない労働審判では、このような論争を繰り返すことは予定されていません。
従って、労働審判の申立書では、予想される相手方の言い分に対する反論も含めて、それなりに詳細なものを作成することになります。また、自らの言い分を裏付ける証拠も整理し、申立書とともに裁判所に提出します。
(2) 第1回期日の指定と、答弁書を踏まえた打ち合わせ
労働審判法では、第1回目の期日は、申立書が提出されてから40日以内に指定するものとされています。第1回目の期日は、裁判所と申立人側の都合を調整して決められますが、第1回期日が決まると、裁判所は、申立書と証拠を相手方に送付します。 送付に際して、裁判所は、第1回の期日の1週間〜10日前までに答弁書や証拠を提出するよう相手方に伝えます(但し、実際には、答弁書等が提出されるのが、期日の3〜5日前ころになることも少なくありません)。
答弁書が提出されてきた後、答弁書に対する反論を検討します(反論を「補充書面」のかたちで提出することもあれば、特に書面は提出せずに、第1回期日に臨むこともあります)。
また、どのような解決を望み、どの程度の譲歩ができるのかについても、検討しておく必要があります。

3. 労働審判でのやり取り

(1) 第1回期日でのやり取り
東京地裁の場合、申立書と答弁書の記載内容を踏まえて、第1回期日に審尋(申立人や使用者側の関係者からの事情聴取)を行います。従って、申立人が労働審判の期日に出席することは不可欠です。この審尋は、申立書と答弁書に記載された内容のうち、双方の言い分が食い違っている点について中心的に行われますので、答弁書を踏まえて、問題点を把握しておくことが重要です。
審尋の後、調停手続に入ります。東京地裁の場合、審尋が終わった段階で、審判委員会が評議を行い、その後、申立人と相手方が別々に呼ばれて、解決についての意向を聞かれます。例えば、解雇事案の場合、復職を求めるのか、金銭解決でよいのか。金銭的な解決を求めるのであれば、どの程度の金額で解決してよいと考えているのか、といったことです。
案件によっては、第1回で解決に至ることもありますので、事前に、どのような解決を求めるのかを決めておく必要があります。
なお、第2回目の期日は、第1回期日の終了時点で、関係当事者の都合を聞いて決められます。
(2) 第2回目以降の手続の流れ
第2回、第3回目の期日は、調停手続を中心に行われます(なお、第1回期日での審理を踏まえ、不足している証拠等があれば、第2回期日で提出することもあります)。
ですから、第1回期日での調停についてのやり取りを踏まえて、再度、解決水準についての検討をしておくことが必要です。
(3) 調停の成立
いずれの期日においても、調停が成立した場合には、調停条項が読み上げられて手続は終了します(後日、裁判所が作成した調停調書が交付されます)。
調停条項には、当事者双方が合意しさえすれば、どのような内容のものでも盛り込むことが出来ます(例えば、解雇を金銭解決で解決する場合には、解雇を撤回させ、解雇日で合意退職する、などといった条項が盛り込まれるのが通常です。また、調停成立後、お互いの名誉、信用を損なうような言動を行わない、といった条項を入れることもあります)。
(4) 労働審判の言い渡し
調停が成立しない場合には、審判期日において、労働審判の言い渡しがされます(なお、審判は審判書を作成し、これを当事者に送達するやり方もありますが、実務上、このやり方が用いられることは殆どありません)。審判の内容は、審判の主文(結論)を読み上げることで行われます(後日、審判に代わる調書が作成され、交付されます)。 審判に不服がある場合には、異議の申し立てをします。異議の申し立てをすると、事件は通常訴訟に移行します。また、申立人が審判を受け入れようと考えても、相手方が異議を申し立てれば通常訴訟に移行します。
いずれの当事者からも異議の申し立てがされない場合には、労働審判は確定し、事件は終結します。

4. 事件の解決と相手方の不履行

調停が成立し、あるいは労働審判が確定した場合、そこに定められた義務内容を履行すること(例えば、金銭の支払いを内容とする調停が成立した場合に、その支払いをすることなど)で、事件は解決することになります。
しかし、ごく稀にですが、相手方が調停調書等で定められた義務内容を履行しないことがあります。このような場合、調停調書や審判に代わる調書に基づき、強制執行をすることになります。

執筆者:弁護士 君和田伸仁

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